「目立ちやすい前歯だけをキレイに整えたい」「できるだけ短期間で歯並びを治したい」
そんなニーズに応える治療として注目されているのが「部分矯正」です。
ただし、部分矯正はすべての歯並びに対応しているわけではありません。メリットが大きい一方で、対応できる症例と対応できない症例があり、選び方を誤ると後悔につながることもあります。
そこで今回は、部分矯正の特徴・向いているケース・注意すべきリスク・全体矯正との違いを解説させていただきます。
目次
部分矯正とは？全体矯正との違い
部分矯正とは、歯並び全体ではなく特定の歯だけに矯正力をかけて動かす治療法のことです。
特にご希望が多いのは、前歯6本を対象とした「前歯部の部分矯正」です。気になる部分だけを効率よく整えられるため、短期間で見た目の改善を目指したい方に選ばれています。
全体矯正との主な違い
| 項目 | 部分矯正 | 全体矯正 |
| 歯を動かす範囲 | 前歯など一部分のみ | 上下の歯列全体(奥歯も) |
| 治療期間 | 半年～1年半程度 | 1年半～3年程度 |
| 費用 | 全体矯正より費用を軽減 | 部分矯正より高め |
| 噛み合わせへの影響 | 改善しにくい | 噛み合わせも整えられる |
部分矯正は、前歯の傾きや隙間など、見た目の「細かなズレ」を整える矯正方法です。
全体矯正は、噛み合わせや奥歯の位置関係まで総合的に改善する治療になります。
部分矯正が向いている典型的なケース
部分矯正はすべての症例に適応できるわけではありませんが、条件がそろえば短期間での効果が期待できます。
【部分矯正が適応しやすい症状】
・前歯のすきっ歯
・前歯のわずかなねじれ
・軽度のガタつき
・全体矯正後の後戻りが前歯にだけ見られる場合
・下の歯1～2本の軽いズレ
歯の根の方向や顎の骨格に問題がない、軽度〜中程度の乱れなら部分矯正が対応になることが多い症状です。
矯正装置の選択肢と特徴
部分矯正では、症例や目的に合わせて装置が異なります。
それぞれにメリットや適応が異なるため、治療計画に応じてより良い方法を選択します。
ワイヤーを使った部分矯正
前歯だけにブラケットとワイヤーを装着する方法で、細かく歯を動かすことに優れています。
・軽度のガタつきやねじれに対応しやすい
・比較的費用を抑えられる
マウスピース型矯正（部分矯正専用プラン）
インビザラインGOなど、部分矯正用のプログラムを使用する方法です。
透明で目立ちにくいため、矯正中の見た目を重視する方に人気があります。
・軽度の歯並びのズレに対応
・治療シミュレーションで仕上がりを確認できる
・装着時間を守れない場合は効果が出にくい
ミニスクリューを併用した部分矯正
動かしたくない歯を固定し、動かしたい歯だけを効率的に移動させる方法です。
・効率的に歯を動かすため、短期間で改善しやすい
・小さな外科処置が必要になることがある
部分矯正で知っておきたいリスク・限界
部分矯正は、装置が付く部分が少ない手軽さや期間の短さといった魅力がありますが、同時に「できること」と「できないこと」がありますので、治療前に必ず確認しておきましょう。
噛み合わせの改善はできない
部分矯正は 前歯の見た目を整えることが目的のため、奥歯の噛み合わせ調整できません。噛み合わせに問題がある場合は、全体矯正が必要になります。
無理に動かすと歯根が傾くリスク
動かす範囲が限られている分、無理に揃えようとすると歯根だけが過度に傾くなど、不自然な仕上がりになる可能性があります。
適応できないケースがある
次のような症例は、部分矯正では十分な改善が難しく、全体矯正が適応になることが多いです。
・抜歯が必要なほどの強いガタつき
・奥歯が噛み合わない開咬
・骨格性の受け口・出っ歯
・深い噛み合わせ
・奥歯が倒れ込んでいる状態
部分矯正が可能かどうかは、精密検査と診断が必要です。
治療中・治療後に大切なメンテナンス
部分矯正は比較的短期間で終わる治療ですが、動いたばかりの歯は、しっかり定着していないため、治療後の管理を怠ると後戻りしやすいという特徴があります。
きれいに整えた歯並びを長く保つために、次の3つのポイントは必ず押さえておきましょう。
リテーナー（保定装置）の装着が重要なポイント
矯正で動かした歯は、周囲の骨が安定するまで一定期間の時間がかかります。
そのため、治療後は リテーナーを半年〜2年ほど着用するのが一般的です。
・動かしたばかりの歯は後戻りしやすい
・特に「後戻り経験がある人」は長めの保定が必要
・はじめは、食事や歯磨きの時以外装着し、安定してきたら就寝時に装着するように徐々に移行します。
(歯科医師から指示がありますので、自己判断しないようにお願い致します。)
適切な保定を行わないと、せっかく整えた前歯が徐々に動いてしまい、元の位置に戻る可能性が高くなります。
スマイルライン・前歯のバランス確認
部分矯正は見た目の改善が目的のため、治療後も細かなバランス調整をする場合があります。
【チェックポイント】
・スマイルライン（上の歯の並びの曲線）が崩れていないか
・前歯の角度が自然に見えているか
・前歯の長さの左右差が出ていないか
・正面・横顔のシルエットが調和しているか
必要に応じて、微調整（追加アライナーなど）を行うこともあります。
定期検診で（3〜6か月に1回）で安定を確認
部分矯正では前歯だけを動かしているため、治療後も以下の点を確認する必要があります。
・歯が正しい位置に並んでいるか
・噛み合わせに問題が出ていないか
・リテーナーが適切にフィットしているか
・歯周組織（歯ぐきや骨）が健康に維持されているか
特にリテーナーの変形や破損があると後戻りや正しい歯列ではない力がかかってしまうこともあるため、早めの修理・再作製も重要です。
部分矯正の成功例と、失敗を避けたケース
部分矯正の成功例と失敗を避けて全体矯正にしたケースをご紹介します。
【成功例】前歯のすき間を改善したケース
前歯2本のすき間
ワイヤーを使った部分矯正を行い、約4か月ですき間を解消しました。
噛み合わせに問題がなかったため、部分矯正のみで十分に整い、短期間で治療を行うことができました。
【失敗回避例】前歯だけ整えると、かえって口元が出る？
前歯のガタつきを「部分矯正で治したい」と希望して来院されたケース。
しかし精密検査を行うと、前歯だけを動かすと口元が前に出るリスクが高いことが判明。
そのため全体矯正をご提案し、最終的に横顔のバランスも整った自然な仕上がりにすることができました。歯並びに合わない誤った選択を避けられたことで、より良い結果につながりました。
【まとめ】
部分矯正を上手に活用して、効率よく理想の歯並びにしたい方は多いのではないでしょうか。
部分矯正は、「気になる前歯だけを短期間で整えたい」という方にとって、とても魅力的な治療法です。
ただし、
・骨格的な問題がある
・噛み合わせのバランスが悪い
・歯のガタつきが強い
といったケースでは、部分矯正だけでは十分な改善が難しく、全体矯正が対象になることも少なくありません。
部分矯正が適しているかどうかは、精密検査による診断が必要です。
短期間で対応できる場合もあれば、部分矯正では逆に口元バランスが崩れてしまうケースもあります。
そのため、部分矯正のメリット・限界を理解し、自分に合った治療法を選択することが大切です。
理想の歯並びを叶えるために、気になる方はぜひ一度、当院にご相談ください。患者様のご希望と歯並びを考慮してより良い治療方法をご提案いたします。
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