こんにちは!難波矯正歯科です。
矯正治療では、ブラケットやワイヤーに加えて、「顎間(がっかん)ゴム」やと呼ばれる医療用の小さなゴムを使用することがあります。これは、患者様ご自身で毎日付け外しを行う必要があるため、面倒に感じたり、つい忘れてしまったりすることもあるかもしれません。
しかし、この一見地味に見えるゴムかけは、歯並びや噛み合わせを整える上で、実はとても大切な役割を担っているのです。
では、もしゴムかけを指示通りに行わないと、どのような影響があるのでしょうか。今回は、「ゴムかけをさぼるとどうなるのか」について解説します。
目次
ゴムかけはなぜ必要?
ゴムかけの主な目的は、歯の噛み合わせを精密に調整することです。
ワイヤーやマウスピースといった矯正装置は、歯を横方向(前後左右)に動かすのは得意ですが、縦方向(上下)の動きや、顎全体のバランスを細かく調整するには限界があります。そこで活躍するのが、顎間ゴムです。
上の歯と下の歯の装置にゴムを引っ掛け、引っ張られる力を利用して出っ歯や受け口、歯がうまく噛み合わない開咬(かいこう)といった状態から、上下の歯がしっかりと噛み合うように調整していくわけです。
ゴムかけを開始する時期は、状態によって異なりますが、一般的には全体の歯並びがある程度整ってきた治療の中期から後期にかけて行われます。
使用するゴムには、太さや強さが異なるさまざまな種類があり、どのゴムを、どの歯に、どのくらいの期間かけるかは、歯を動かす距離や方向、治療計画に基づいて歯科医師が判断し、指示を出します。
ゴムかけを始めると、歯が動く際に多少の痛みを感じることがあります。これは歯が正しく移動している証拠です。この感覚は1週間程度で慣れてきますが、痛みが強い場合は、硬い食べ物を避けたり、必要に応じて歯科医師に相談しましょう。
ゴムかけをさぼると、どうなる?
ゴムかけによる歯の動きは、ワイヤーやマウスピース装置による初期の大きな移動と比べると、見た目の変化が分かりにくいかもしれません。そのため、「本当に効果があるのかな?」「少しくらいやらなくても大丈夫では?」と、ついゴムかけを怠ってしまうこともあるでしょう。
しかし、ゴムかけを指示通りに行わないと、次のような影響が出てくる可能性があります。
①治療期間が延びる
ゴムかけは、矯正装置だけでは難しい歯の動きを調整するために使用します。これを怠ると、歯に継続的な力が加わらず、移動スピードが落ちて計画通りに動いてくれません。その結果、次のステップに進めず、全体の治療期間が当初の予定より長引いてしまうことがあります。
②仕上がりの質が低下する
ゴムかけは、最終的な噛み合わせを調整する段階で特に重要です。もし指示通りに行わないと、歯並びは整って見えても、上下の歯がしっかり噛み合わない、といった仕上がりになる可能性があります。
噛み合わせは、見た目の美しさだけではありません。食事をしっかり噛む機能や、顎関節への負担軽減、さらには肩こりや頭痛といった全身のバランスにも関わってくるのです。せっかく治療を受けるのですから、審美面と機能面の両方で満足のいく結果を目指しましょう。
③ 後戻りのリスクが高まる
歯は、元の位置に戻ろうとする性質があります。ゴムかけを怠ると歯を支える骨や組織が新しい位置で安定する前に力が途切れてしまい、せっかく動かした歯が後戻りするリスクが高まります。
④ 追加費用の発生や再治療が必要になることも
治療期間が延びれば、その分通院回数が増え、調整料などの追加費用がかかることがあります。また、後戻りが大きかったり、計画とのズレが修正できなかったりした場合には、追加の装置が必要になったり、場合によっては再治療を検討する必要が出てくる可能性も否定できません。
なぜサボってしまうの?ゴムかけを続けられない3つの原因
ゴムかけを毎日続けるのは根気がいるため、「つい忘れてしまう」「面倒に感じてしまう」という声も少なくありません。ここでは、ゴムかけが続けにくくなる主な理由を紹介します。
理由1:効果が実感しにくい
矯正治療は時間がかかります。治療開始時の「きれいになりたい!」という気持ちも、目に見える変化が少ない時期には、少し薄れてしまうことがあるかもしれません。
理由2:面倒・忘れがち
食事や歯磨きのたびにゴムを付け外しするのは、確かに手間がかかる作業です。特に外出先や忙しい時には、「面倒だな」と感じたり、うっかり忘れてしまったりすることもあるでしょう。
理由3:痛みや違和感がある
ゴムかけを始めたばかりの頃や、ゴムの種類・強さを変更した際には、歯が動くことによる痛みや違和感が出ることがあります。これは歯が動いている証拠でもありますが、痛みが強いと続けるのが辛くなるかもしれません。
理由4:見た目や話しにくさが気になる
「ゴムが見えるのが恥ずかしい」「話しにくい」と感じる方もいらっしゃいます。特に人前に出る機会が多い方にとっては、気になる点かもしれません。
理由5:周囲の理解が得られにくい
ご家族やご友人など、周りの方から矯正治療の大変さを理解してもらえず、続けるのが難しくなるケースもあります。一人で頑張っていると感じると、孤独感を覚えてしまうかもしれません。
ゴムかけを無理なく続けるための5つのコツ
ゴムかけは毎日続けるのはなかなか大変ですよね。「今日は少し休みたいな…」と思ってしまう気持ちもよく分かります。ここでは、ゴムかけを無理なく続けるための5つのコツをご紹介します。
1. 生活の一部にする
ゴムかけを「特別なこと」ではなく、「歯磨き」のような毎日の習慣にしてしまいましょう。「朝食後の歯磨きの後」「寝る前」など、すでにある習慣と結びつけて、決まったタイミングで行うのがおすすめです。ゴムや必要な道具は、洗面台などいつも使う場所に「定位置」を作ると、さっと手に取れて便利です。スマートフォンのリマインダー機能を使ったり、カレンダーに印をつけたりするのも、忘れ防止に役立ちます。
2. 予備のゴムを持ち歩く
外出中にゴムが切れたり、食事の際に外してなくしてしまったりすることは、意外とよくあります。そんな時でも慌てないように、いつもポーチなどに予備のゴムをいくつか入れておきましょう。すぐに付け直すことで、治療効果を途切れさせずに済みます。
3.目標の再確認をする
「面倒だな」と感じた時は、あなたがなぜ矯正治療を始めようと思ったのか、その最初の気持ちを思い出してみてください。理想の歯並びになったご自身を想像したり、治療前の写真と見比べて変化を確認したりすると、「もう少し頑張ろう!」という気持ちが湧いてくるかもしれません。
ゴムかけをさぼってしまったときは正直に伝える
毎日続けるゴムかけ、時にはうっかり忘れてしまったり、指示通りにできなかったりすることもあるかもしれません。「怒られるかも…」とためらってしまうかもしれませんが、そんな時こそ、正直に歯科医師へお伝えいただくことが、実はとても大切なのです。
歯科医師は、患者様が指示通りにゴムかけを行っていることを前提として、治療の進捗を確認し、次のステップを計画します。もしゴムかけができていないのに歯が計画通りに動いていない場合、その事実をご報告いただけないと、「何か別の原因があるのかもしれない」「もっと強い力が必要なのかも」と、本来とは異なる判断をしてしまう可能性があります。
これにより、治療計画の不必要な修正や、治療期間の延長につながることも考えられます。正確な状況をお知らせいただくことで、適切な対応を考え、治療をスムーズに進めることができるのです。
診察の際には、「〇日間ほど、あまり付けられませんでした」「〇〇が理由で続けるのが難しかったです」など、具体的に教えていただけると助かります。
また、見た目が気になる、痛みがある、付け外しが面倒など、続けにくい理由があれば、遠慮なくお話しください。理由によってはゴムの種類を変えたり、装着方法を工夫したり、痛みを和らげる方法を一緒に考えたりと、対策を講じることが可能です。
まとめ
ゴムかけは、理想的な噛み合わせを目指すために、矯正治療において重要な役割を果たします。地道な作業ですが、日々の積み重ねが将来の美しい笑顔と健康な噛み合わせにつながるのです。
もしゴムかけを指示通りに行えなかったとしても、正直にお伝えいただければ、一緒に解決策を探ることができます。私たちは、患者様が前向きに治療を続けられるようサポートしますので、困ったこと、不安なことがあれば、いつでもご相談ください。